【全国学力調査 成績低下の真相:報道と現場のギャップを読み解く】

学校

2025年7月31日、文部科学省が公表した全国学力・学習状況調査(いわゆる全国学力テスト)の「経年変化分析調査」において、小学6年生・中学3年生ともに複数教科でスコアが顕著に低下していることが明らかになりました。小6国語は489.9点、算数は486.3点、中3英語は478.2点など、基準値500を大きく下回る結果が並びます。この数字はメディアで大きく取り上げられ、「日本の学力低下」という見出しが紙面やネットを賑わせました。しかし、この“学力低下”という現象の背景や原因は、報道と現場で大きく認識が異なります。

成績低下の実態と報道ベースの見解

報道では、次のような原因が強調されました。

  1. 家庭学習時間の減少とスマホ・ゲーム時間の増加
    文科省調査では、スマホ使用やゲーム時間の長さとスコア低下に相関が見られ、家庭学習時間が短い傾向が指摘されました(朝日新聞)。
  2. コロナ禍による学習機会の制限(特に英語)
    小学校英語の導入時期とコロナ期が重なり、スピーキングなどの活動が制限され学びに影響があった可能性(朝日新聞)。
  3. 保護者の教育観の変化
    「学校生活が楽しいなら成績にこだわらない」という保護者が増え、家庭で学習について話す機会が減っている(みんなの学校新聞編集局)。
  4. IRT(項目反応理論)による比較指標
    問題が年度ごとに異なってもスコア比較が可能になったが、一般には指標の意味が分かりにくく、“下がった”印象だけが先行しやすい。

これらは全国集計と相関データから導かれた推測であり、文科省も「明確な因果は特定できない」としています。

現場教員の声:リアルな実感

一方、現場の教員たちは、報道とは異なる角度から問題を見ています。SNSやブログ上で以下のような声が目立ちました。

  • 投稿①(Twitter):「この程度のテストスコア下落で済んだんです フジテレビは日本の教員と子ども叩くんですか?」
  • 投稿②(ブログ):「基礎を軽視して話し合い重視の授業が増えた。教師は授業準備より書類や会議に追われ、現場を知らない施策に振り回されている」(教育かわら版
  • 投稿③(ブログ):「アクティブラーニングばかり強調され、基礎学力が身につかない。評価制度とのズレが深刻」(教育かわら版
  • 投稿④(note):「評点より漢字賞の方が子どもにとって価値があると言われた。学習の価値観が変わってしまっている」(note記事
  • 投稿⑤(note):「報道はコロナのせいにするけど、それだけじゃない。教員不足、多忙、制度変更…現場は限界」(note記事

アクティブラーニングと二極化の実感

現場からは「アクティブラーニング」の導入がもたらす二極化現象についての声も多く聞かれます。意欲的で発信力のある生徒は授業でさらに伸びる一方、基礎的な読み書き計算が不十分な生徒は授業の議論についていけず、置き去りになりがちです。さらに、反復練習やドリル学習などの基礎力養成の時間が減少し、学力の底上げが難しくなっているという指摘もあります。

報道と現場の認識ギャップ

観点報道ベースの説明現場の実感ギャップが生む問題
生活習慣スマホ/ゲーム増、家庭学習減学校だけでは制御不能学校への過剰な責任追及
コロナ影響英語など学習機会の毀損不登校増・学級運営困難など長期影響「コロナのせい」論争に終始
指標・公表IRT導入、返却前倒し繁忙期負荷増大、説明難化数字先行で改善余力が矮小化
人員体制報道では軽視教師不足・業務過多が最大要因政策優先度のズレ
指導方法アクティブラーニング推進二極化と基礎力低下の懸念改善方向の認識不一致

なぜギャップは生まれるのか

  1. 報道の特性:短時間で理解できる要因を提示する必要があるため、生活習慣や保護者意識など“分かりやすい”テーマが選ばれやすい。
  2. 現場の複雑さ:教員不足、制度変更、不登校増加、指導法の転換など、相互に絡み合う課題が日常的に存在。
  3. 情報の非対称性:調査の詳細分析や現場の体感はメディアを通じて十分に共有されない。

ギャップを埋めるための提言

  • 報道機関への提言:数値の解釈に背景説明を加え、現場の声を反映する取材体制を整える。
  • 行政・政策への提言:教員の業務負担軽減と人員配置の見直し、返却前倒しに伴う支援策の導入。
  • 学校現場への提言:基礎学力向上のための反復学習時間の確保、保護者説明用のIRTスコア解説ツール整備、校内共有と改善策検討の時間確保。

まとめ

全国学力調査の成績低下は、一面では子どもの生活習慣やコロナ禍の影響を示すサインですが、もう一面では教員不足や制度運営、指導方法の転換に伴う課題を映し出す鏡でもあります。報道と現場の認識のズレは、対策の方向性を誤らせるリスクがあります。このギャップを埋めるには、数字と背景の両方に光を当て、多様な視点を持つ議論が必要です。

本質的な議論から逃げているうちは、改善されないと思います。また、家庭教育力の低下や躾の問題も多分に関連しているようにも思います。

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