高級魚「ノドグロ」の完全養殖に成功 近畿大が発表 世界初の成果

先端研究

日本の大学研究というと、物理や医学、AIといった分野が注目されがちですが、実は水産研究こそ、日本の強みが色濃く出る分野の一つです。その代表例としてよく知られているのが、近畿大学によるクロマグロの完全養殖です。

そして近年、その近畿大学が新たに挑んでいるのが、高級魚として知られるのどぐろ(アカムツ)の研究・養殖に関する取り組みです。本記事では、クロマグロ養殖の実績を振り返りつつ、のどぐろ研究の現在地と、その科学的・教育的な面白さについて整理してみたいと思います。

近畿大学といえば、「マグロ大学」と呼ばれるほど、クロマグロ養殖研究で知られています。特に重要なのは、完全養殖――すなわち、人工ふ化から成魚、産卵までを人の管理下で完結させる技術を確立した点です。

クロマグロは回遊性が強く、成長過程や産卵条件も非常に繊細な魚です。そのため、

  • 水温
  • 水流
  • 餌の成分
  • 光周期
    といった複数の環境要因を同時に制御する必要があり、これは単なる「飼育」ではなく、生理学・生態学・環境科学の総合研究と言えます。

この成功は、資源枯渇が問題視される中で、持続可能な水産業のモデルケースとして国際的にも評価されています。

のどぐろ(アカムツ)は、日本海側を中心に知られる高級魚で、「白身のトロ」とも称されるほど脂の乗りが良い魚です。一方で、

  • 深海性
  • 成長が遅い
  • 生態情報が限られている

といった理由から、養殖や資源管理が難しい魚でもあります。

今回紹介されている研究では、のどぐろの生理特性や成長条件を科学的に解明し、将来的な安定供給や資源保全につなげることが目標とされています。これはクロマグロ研究で培ったノウハウを、別種の高級魚に応用する試みとも言えるでしょう。

理科的に見た「面白さ」はどこにあるのか

この手の研究は、「すごい」「美味しそう」で終わらせるのは非常にもったいない分野です。理科教員の視点から見ると、以下のような学習要素が詰まっています。

  • 生物の恒常性
    水温や溶存酸素量の変化に対する適応
  • エネルギー効率
    成長速度と摂取エネルギーの関係
  • 環境要因と生物反応
    光・水圧・水流が行動や成長に与える影響
  • 人間活動と生態系
    乱獲と養殖の違い、持続可能性の議論

中学・高校理科で扱う内容と直結しており、「教科書の知識が現実世界でどう使われているか」を示す好例かもしれません。昨今の探求ブーム(賛否はおいといて)と絡めると本来であれば面白いアプローチのしかたもあるように思うのですが、なかなか現実的には厳しいでしょうか。

探究学習やSTEAM教育が求められる中で、「実社会の研究」をどう授業に落とし込むかは、多くの教員が悩むポイントです。その点、近畿大学の水産研究は、

  • 日本の産業と直結している
  • 生徒にとって食という身近なテーマ
  • 科学的プロセスが明確

という三拍子がそろっています。

例えば、
「なぜクロマグロは養殖が難しかったのか」
「のどぐろを養殖するには、どんな条件を制御すべきか」
といった問いは、そのまま探究テーマになります。

おわりに

クロマグロの完全養殖という“成功体験”に安住せず、次の難題としてのどぐろ研究に挑む近畿大学の姿勢は、日本の大学研究の理想形の一つだと感じます。

理科教育の現場でも、こうした研究事例を単なるニュースとして消費するのではなく、科学の積み重ねと失敗の先にある成果として紹介していくことが重要なのではないでしょうか。

先端研究は、遠い世界の話ではありません。
教室で扱っている理科の知識が、社会の中で確かに生きている――
そのことを伝える材料として、これほど適した題材も多くはないはずです。

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