東京都の公立高校入試におけるESAT-J(スピーキングテスト)の問題

学校

2022年度の教育問題として絶対に忘れてはいけない問題がこの東京都の公立高校入試に導入されたスピーキングテストの問題でしょう。

様々な媒体で、継続的に記事が出ています。

東京都立高校入試で英語スピーキングテスト 「改善の必要」指摘も(11/28付NHK)
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221128d.html

中学校では習わない文法を出題 都立高入試に導入された英語スピーキングテストに非難集中(1/26付AERA記事)
https://dot.asahi.com/aera/2023012500073.html

絶対に忘れてはいけない問題として、また、今後に繋げていかなければいけない問題として、記録の意味でも記事にしておきます。

問題点は山積み

何よりも受験生が可愛そうな今回の問題。

どういう観点で問題になっているか細かく見ていきます。

難易度

何よりもこれに尽きます。

そもそも「中学校学習指導要領に基づく内容とする」という出題範囲が都教委によって示された実施要項に明記されています。

であるにも関わらず、高等学校で学習するような高度な文法(話題になるのはmay have seenなどの助動詞+完了形のもの)が出題されてしまっているのはルール違反でしょう。

こうなってしまうと、出題範囲を逸脱しているために受験生としては勉強のしようがありません。

都教育長の12月8日の答弁でも「中学校で学ぶ単語(mayもhaveもseenも)を用い、場面に応じて英語として自然となるよう文を作成し、出題したものでありまして、学習指導要領を逸脱しているとの指摘はあたりません」とあります。

もう、英語教育を舐めているとしか思えません。

単語を習っていれば使えるだろうというのは、4年生で漢字の「卒」を習ったから「卒(にわ)かに」も読めるよね!と言っているようなものです

どれだけ第二言語を習得するのが大変か。

どれだけ日本の英語教育が文法に良くも悪くも細かく指導をしているか。

答弁の返答も、まぁ上手く言葉選びをしてきたと感じますが、そこはやはり本質ではないとすぐに見抜かれてしまいます。

こういう方々によって、小学校にも英語教育が導入されているとすれば、現場の苦労は想像を絶すると感じます(特に英語が苦手なベテランの先生たち‥)

公平性

所詮は又聞きの話だったりYahoo!コメントの中の話なので信憑性に欠ける部分はいくらかあるでしょう。

ただ、複数見かけたものでいうならが、かなり問題点はあるように感じます。

  • 周囲の音声が聞こえてきた
    • わからなくても周りの音を聞いて、聞こえたものを応えられる可能性。
    • 自分が何も喋らなくても、周囲の音が録音されて採点される可能性。
    • 単純に集中力の問題
  • 業務が外部委託
    • ベネッセが一枚噛んでいる(過去に個人情報流出など)
    • 採点はフィリピンで行われる(フィリピンのレベルは上がっているものの日本のようなきめ細やかな対応がどの程度されているのか)

なお、今回の英語スピーキングテストについては、採点の根拠となる情報の開示請求があったとしても、スコアのみが全てという状況のようです。

私学教員の視点から

毎年入試業務を行っている私学教員の目線で話をしていきます。

入試作成は神経を使う仕事

作問から採点にいたるまで、非常に神経を使います。

問題の内容や難易度、平均点に関係することはもちろんですが、誤字脱字、状況の設定ミスはないか、紛らわしい日本語表現はないかなど校正に校正を重ねて作問します。

当日の採点業務でも、細かく配点や部分点を決めて、根拠を明確にします。

使用する漢字についても、小学生や中学生の時点で学習しているから使用可とするもの、一般的に使われる業界用語だから漢字表記にルビを併記するもの、などできるだけ学習範囲を逸脱しないように配慮をしています。

こういう業務を毎年やっている側からすると、今回の英語スピーキングテストについては思うところが多々あります。

作問上の歯止めがかからなくなる危険性

中学受験であれば、塾に通うのがほぼ必須です。

正直な話、中学内容まで先取り的に学習している子どもが大半だと思います。

中学の内容や、高校の内容でも噛み砕いて状況を説明し、既習事項のみで解答できるようになるまで条件の説明がされています。

高校受験であれば、基本は中学内容までのことが多いと思います。

少しずつ条件設定を複雑にして小学校・中学校レベルの計算を組み合わせて難しくしているタイプの問題もあるように思います。

歯止めがかからなくなるというのはこの部分です。

高校生の大学受験では、昨今医学部を中心に大学レベルの内容をリード文で解説しながら高校生に出題するものも増えています(私大が多いですが)。

最終的には高校生の知識や読解力がで解答できてしまうものなのですが、テーマとしては高校内容を逸脱しており、初見殺しのようになってしまう問題も少なくありません。

高校生の大学受験ならまだしも、中学生(義務教育)の高校受験としてはいかがでしょうか。

おわりに

今回は東京都の英語スピーキングテストの問題を記事にしました。

まだまだ問題は続きそうなので今後の展開にも要注目です。

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