元記事はこちら
公立学校教員への残業代認めず 最高裁が上告棄却 教員側の敗訴確定(3/10付毎日新聞記事)
最初は2021年の秋頃のことになります。
「授業準備は5分」に「小学校をなめているのか」 公立教員残業代訴訟の「仕分け」に教員ら困惑(2021年11/26付AERA記事)
裁判の経過を紹介すると、2018年に埼玉県教育委員会を相手に田中まさお先生(仮名)が起訴します。
2018年12月からさいたま地方裁判所で審理が開始され、2021年10月に上記AERA記事のような形の判決が出てきました。
そのため、2021年11月に田中まさお先生は上告。
2022年3月には東京高裁で審理が開始されるも、2022年8月には最高裁判所に上告。
今回はその上告が棄却されたために敗訴が確定したという流れになります。
田中まさお先生のホームページはこちら。
唯一の救いは、1審の判決で以下のような付言があったことでしょうか。
「多くの教職員が一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり、給特法は教育現場の実情に適合していないのではないか」
https://mainichi.jp/articles/20230310/k00/00m/040/299000c
原文からは少し表現が変わってしまっています。
今回の判決については、裁判所は粛々と法律に則って判断しただけということになります。
そのため、今後教員の働き方を変えていくには、法律を変えていく(立法)必要があります。
これについては、Yahoo!ニュースで専門家のコメントもついています。
駒澤大学の山口浩教授のコメントは以下の通りです。
判決自体は、給特法の規定に従うなら「妥当」な判断である。とはいえ、日本国憲法第81条は最高裁判所の違憲立法審査権を規定しているものの実際にはほとんど機能しておらず、今回も教職員の長時間労働の実態や働き方改革が重視される現今の社会情勢を省みることなく杓子定規な判断を行なったとの批判は免れない。さらにいえば、本来こうした問題は司法の前に立法や行政で対策をたてるべき問題であり、その意味で政府の責任はさらに重い。教員の処遇改善については政府や与党において検討が進められているが、長年にわたる不作為と徒な思い付きの「改革」の積み重ねが現在の教育現場の疲弊を招き、結果として生じた学びの質の低下がひいてはわが国の国際競争力の低下にすらつながっていることの責任をまずは認識すべきであろう。
弁護士の島崎量氏のコメントは以下の通りです。
大変残念な結論ですが、原告の田中さんには、まずは闘ってくれたことに感謝の意をお伝えしたいです。 給特法に関する裁判は、これまでに何件も起こされてきましたが、今回もその壁を突破することはできませんでした。 最高裁判所で、給特法が憲法違反という判断がだされず、給特法が維持されるのであれば、今度は、国会で法律を変えるしかありません。 現在、給特法見直しが議論されています。 給特法の問題は、残業代の支払いを認めないだけでなく、当たり前の労働を労働と認めず、労基法にある長時間労働を抑制する規制(残業代もその一つ)が機能しないことです。 現在、長時間労働が是正されない教員職場では、教員のなり手もいなくなり、教員不足も深刻化しています。これは、教育の質低下も招いています。 この判決をうけて、給特法の問題に向き合った議論が政治部門でなされ、法改正がなされることを期待します。
以上のことからもわかるように、裁判(司法)では既にある法律を突破することができませんでした。
ただ、教育は国の未来を創る仕事であり、教育の質の低下が起こると国力の低下につながりかねません。
給特法の改正などについては先日議論もなされたようです。
全面的な廃止か、調整額のアップか‥という点で記事になったのは2023年の2月22日の朝日新聞の記事。
残業代支給か、調整額アップか、手当増か… 自民が教員給与改善案
自分もTwitterでアンケートをとったことがありますが、どちらかというと手当よりも仕事を減らして欲しいという声も少なくなかったです。
教員のなり手不足、働き方改革など気になることは多いです。
今後も注視しなければいけないことは少なくなさそうです。
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