合格に近づく教員採用試験の小論文の書き方

教員になる

書き方を知らないだけで教員採用試験に合格できない人がいます。

私の同期でも、教員として優秀で現場では既に担任を持って教壇に立っているのに、論文が苦手で何年も正規採用になれずに講師だった人がいます。

大切なことはエッセイや感想や決意ではなく小論文を書くこと。

細かい語尾の表現などは、教授や受験生どうしでも指摘することができると思うので、今回は自分が大学の指導教官に添削をしてもらっていたものを題材にしながら解説をしていきます。

書き方の型と流れ、その根拠を知ることが大切です。

教員転職マン
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2015年度 東京都小学校全科(理科コース含む)論作文

まずは実際に1つ例を見てもらった方が早いかもしれません。

問題文はこちら

次の問題について、1000字以内で論述しなさい。ただし840字を超えること。

 各学校では、児童に自他の生命を尊重する心を育てる教育の充実を図ることが求められています。このことについて、あなたの考えを述べた上で、その考えに立ちどのように学級経営に取り組んでいくか、述べなさい。

何度か添削をしてもらった結果の自分の解答例はこちら。

 現代社会は情報化が進み、個人でできることが増えた。しかし人間は他者との関わりなくしては生きてゆけないため、他者を尊重することは必要不可欠である。近年、小学校では暴力に関する問題の発生件数が増え続けている。他者に対して容易に暴力を振るう、公共のものを壊してしまうなど、思いやりをもって接することができない子どもは少なくない。私は現代の子どもたちには他者との関わりが不足していると考える。このことに対して、私は以下のように学級経営に取り組んでいく。

 第一に、特別活動の充実を図る。係活動、委員会活動など、児童が小集団でそれぞれの役割をもち、協力しながら活動できるようにする。子どもどうしが意見を出し合ったり、やり方を工夫し合ったりしている様子を、帰りの会などで学級の中で共有する。このような行動が他の集団にも波及し、自分が所属する集団の中で自分自身の考えを表現し、他者と主体的に関わりながら活動を行い、達成感を感じられるようにはたらきかけていく。定期的に振り返りの時間をとり、自分たちの役割の中での長所や課題を確認し、解決への道筋を話し合う時間を設定する。自分たちの活動学期が変わって所属する係や委員会が変わった際にも、同様のことに配慮していくが、係決めや委員会決めの後に、前任と後任の子供どうしで引き継ぎの時間をとり、係や委員会の仕事を通じて他者と関わる機会を設けることも行う。

 第二に、学級内で生物の飼育を行う。自分以外の他との関わりは、人間だけでなく他の生物でも必要である。子どもが興味をもって協力して世話ができ、産卵等の条件も比較的容易で、理科教材としても取り扱うことができればなおよいと考える。クラス全員で飼育し、全員の目で変化に気づき、生命に対して気遣う。私が現在勤務している学校では、ウーパールーパーの飼育を行っているが、そのうちの一匹が先日産卵した。現在は科学部を中心に今まで以上に丁寧に飼育環境の整備が行われているが、科学部の中で適切な飼育条件を調べて報告しあったり、石を拾って来て適切な大きさに砕いたりするなど、部の中で協力して活動が展開されている。

 以上のように、私は担任として子どもたちが他者と主体的に関わっていけるようにしていく。学級運営だけでなく、道徳の時間の充実など学校活動全体を通して他者との関わりを充実させ自他の生命を尊重する心を育てていきたい。

受かる小論文の書き方

今回の私の解答例以外も、インターネット上で見かける模範解答も、内容は違うだけで基本的な方針は同じだと考えています。

最近は問題文に以下のような表現が付け加えらています。

あなたならどのように取り組んでいくか、志望する校種と教科等に即して、具体的な方策を二つ挙げ、それを取り上げた理由とともに、それぞれ10行(350字)程度で述べ、まとめなどを含めて全体で30行(1050字)以内で述べなさい。ただし、26行(910字)を超えること。

今まではこの表現すらなかったので、この「型」を知らない人は落ちる、知っていてうまく書けた人が合格するという流れもありました。

特に東京都の小論文は「東京式」なんて揶揄されていた時期もありました。

小論文の基本的な構成としては

①序論(課題の受け止め)

②本論1(学校活動で実践すること)

③本論2(別の観点から実践すること)

④まとめ(もうワンプッシュできると理想)

という形になります。

自分が受験する自治体の文字数に合わせてアレンジをしてください!

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以下で段落ごとに分析していきましょう!

第1段落

最初の段落では社会背景を踏まえて課題を受け止めどのようなことに取り組んでいくか大きな方針を述べます。

その際に、その取り組みが必要である理由子どもたちの現状を踏まえて書くと社会と学校現場(子どもたち)のつながりが見え、次の段落以降で書いていく内容の説得力が増します。

色分けして分析すると先ほどの解答例はこうなります。

 現代社会は情報化が進み、個人でできることが増えた。しかし人間は他者との関わりなくしては生きてゆけないため、他者を尊重することは必要不可欠である。近年、小学校では暴力に関する問題の発生件数が増え続けている。他者に対して容易に暴力を振るう、公共のものを壊してしまうなど、思いやりをもって接することができない子どもは少なくない。私は現代の子どもたちには他者との関わりが不足していると考える。このことに対して、私は以下のように学級経営に取り組んでいく。

Point

第1段落では以下の3段論法を意識します
①社会的な背景を踏まえつつ課題内容を把握していることを伝える
(大人になってからも必要なことだからこそ大切なんだとアピールする)
②その課題を解決するために必要な内容や取り組みを書く
(第2段落と第3段落につながるテーマ)
③このことに対して私は以下のように取り組む。
(ここは定型文でもOK)

第2段落

最初の文章で大きな流れを提示して、それ以降はその流れを補足する具体的な活動を列挙します。

必要に応じて根拠を書き加えながら内容を濃くします。

コツは1つのことをダラダラ書かずに自分が教員としてやっていくことを(文章全体がおかしくならない程度で)たくさん並べます

教員としてやっていくことを色付き太字で、その効果や意図を背景色で示しています。

 第一に、特別活動の充実を図る。係活動、委員会活動など、児童が小集団でそれぞれの役割をもち、協力しながら活動できるようにする。子どもどうしが意見を出し合ったり、やり方を工夫し合ったりしている様子を帰りの会などで学級の中で共有する。このような行動が他の集団にも波及し、自分が所属する集団の中で自分自身の考えを表現し、他者と主体的に関わりながら活動を行い達成感を感じられるようにはたらきかけていく。定期的に振り返りの時間をとり、自分たちの役割の中での長所や課題を確認し、解決への道筋を話し合う時間を設定する。自分たちの活動学期が変わって所属する係や委員会が変わった際にも、同様のことに配慮していくが、係決めや委員会決めの後に、前任と後任の子供どうしで引き継ぎの時間をとり、係や委員会の仕事を通じて他者と関わる機会を設けることも行う。

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補足の解説をしていきます

先ほどの第1段落で、「現代の子どもたちには他者との関わりが不足していると考える」と書いているので、これに対する取り組み(解決策)として特別活動の充実という大テーマの提示を1文目に書きます

次の文章では、係でも委員会でも小さい集まりで役割分担をしたり話し合ったりするから他者とかかわるよね、と特別活動の重要性を確認しながら理由説明を兼ねています。

教員がやることとして(良い取り組みを)帰りの会などで学級の中で共有する、と書きました。

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昨日○○委員会でこういう問題があったんだ。みんなだったらどうする?昨日はね、こういう意見がでて、そこにみんなで付け加えて解決したんだよ!意見を付け加えるためには人の話を聞いて理解しないといけないから難しいけど、だからこそ付け加えって大切だよね!

こんな話は日常茶飯事なのではないでしょうか。

よって次の文章では良い行動が波及してより多くの子どもたちができるようになる、活性化するという方向で書いていますね。

さらに、次の大人の取り組みとして達成感を感じられるようにはたらきかけていくわけです。

1つの指導でもたくさんの効果やアプローチがあります。

ダラダラ書かずにいくつも列挙するという理由がここにあります。

色んな効果を知っているし、やりたいこと、やれることがたくさんあるのを知っていますよ!というアピールを紙の上で行うわけです。

小論文のほうは、続けて大人側の時間の使い方に言及しています。

十分に振り返りの時間を設定するよ、という教員側の動きです。

最後は係活動や委員会活動の学期の境目の引き継ぎについて言及していますが、これは実際に自分が働いていた学校でやっていたことでした。

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現場の経験があるに越したことはないですが、なくても書けるのが教員採用試験の小論文です!

Point

第2段落では以下の点を意識します
①第1段落で述べた方針の具体的な取り組みを最初の文章で簡潔に書く
②学校現場における具体的な取り組みを列挙する
(1つの取組みについて厚く記述するのではなく多角的に記述する意識を)

第3段落

教員としての対応力の広さをアピールするために、別の観点から同じように書きます。

この過去問では、私は生物の飼育を2つ目の大テーマにしています。

ある程度書き慣れているからこその計算なのですが、当時理科コースを志望していたので理科(生物)をからめた内容で書こう、というあざとい考えがあります。

戦略的に書くのは、第2段落のように型を知ってからにしてください。

自分の言葉で書けなくなると、必ずボロがでます。

 第二に、学級内で生物の飼育を行う自分以外の他との関わりは、人間だけでなく他の生物でも必要である。子どもが興味をもって協力して世話ができ、産卵等の条件も比較的容易で、理科教材としても取り扱うことができればなおよいと考える。クラス全員で飼育し、全員の目で変化に気づき、生命に対して気遣う私が現在勤務している学校では、ウーパールーパーの飼育を行っているが、そのうちの一匹が先日産卵した。現在は科学部を中心に今まで以上に丁寧に飼育環境の整備が行われているが、科学部の中で適切な飼育条件を調べて報告しあったり、石を拾って来て適切な大きさに砕いたりするなど、部の中で協力して活動が展開されている。

この段落は意図的に先ほどの第2段落と違う書き方をしています。

教員としてどうはたらきかけるかという行動(色付き太字)を少なくして現場経験をアピールしています。

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ただし実践例を書けるのは現場経験者の最大の強みです。大学生は教育ボランティアなどを積極的に行い現場の感覚を知る努力をして下さい!

話の流れも学級内での生物飼育の提案現任校での取り組み実践の紹介にとどまっています。

その理由は、小学校における理科教育の大変さを知っていることと現場経験者として即戦力になるということをアピールするという目的がありました。

教職経験者であればこのような書き方も1つの方法ではあります。

文章中にキーワードが多く散りばめられていますね。

キーワード

他者への興味関心(相互理解とかにもつながるか)

他者との協力

飼育・管理側の観点(理科コースを受験するあざとさ)

生命尊重(今回の問題文にもある)

調査・報告

もちろん、大学4年生などは教職経験がないので、第2段落と同じように様々な取り組み方を列挙するという書き方で大丈夫です!

私自身もこの記事を書くにあたって他のサイトも調べてみましたが、中には「現場での実践を書こう」という学生泣かせのサイトもありました。

現場の経験を書くということは絶対に必要というわけではありません

現場経験を書かずに書いた小論文は以下をご参照ください。

合わせて読みたい

ネタを使い回す教員採用試験の小論文対策!
https://kyouin-tenshoku.com/2020/06/09/01-27/

Point

第3段落では以下のことに気をつけます
①第2段落と同じ様に具体的な取り組みその2を最初に簡潔に述べます
(ただし第2段落とは別の観点から書くことは絶対に意識します)
②同じ様に学校現場における具体的な取り組みを列挙します
(必ずしも教職経験が必要なわけではありません)

第4段落

自分で書いた2段落目と3段落目を受けてまとめます。

その際に、もうワンプッシュできるといいでしょう(無理ならしなくてもよい)。

 以上のように、私は担任として子どもたちが他者と主体的に関わっていけるようにしていく。学級運営だけでなく、道徳の時間の充実など学校活動全体を通して他者との関わりを充実させ自他の生命を尊重する心を育てていきたい

1文目ではまとめていますが、第1段落での自分で設定した解決策に回帰しています。

2文目前半で、「特別活動の充実」「生物飼育」だけでなく道徳教育の充実もするとワンプッシュしつつ、後半では問題文にあった自他の生命を尊重する心を育てることに回帰しています。

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少ない文字数で効果的に書けていると思います

Point

第4段落で書くことは残りの文字数と相談して考えます
①「以上のように」から初めて課題に回帰する
②文字数が必要な場合は補足的な取り組みを記載してダメおしする
③最後に将来に向けて意思表示を書いて

小論文を書くコツ

素晴らしい実践例は必要ありませんし正解もありません。

正確には、どの文章も正解になりえるのです。

こっちの実践の方がいいよ、という絶対的なものはなく、要は自分の言葉でいかに書けるかです。

そして小論文の対策をしておくことは面接試験の対策にもつながります。

例えば面接で「生徒指導で大切なことはなんですか?」と聞かれたらどう答えますか?

人によっては「傾聴から入ること」「公平性を担保すること」「タイミング(その場の指導)が命」と応える内容はそれぞれ違うと思います。

そして上の答えは3つとも正解です。

同じことが小論文にも言えます。

違うのは口頭で答えるのわけではなく、紙の上に文字として表現するだけです。

教員として考える内容や行動する内容は変わりません。

なので、本論1(第2段落)と本論2(第3段落)は自分が教師になったときにやること、取り組むこと、考えることをとにかく列挙してください。

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熱い想いをもっている人ほど悩みがち!型が決まってくればどんなテーマでも書けるようになります!就職活動の自己分析にも通じるところがある印象です!

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